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歴史民俗研究会の伝統文化を訪ねて

−「正月の年中行事・平の村祈祷」−
(平成19年1月12日、本紙掲載)


大般若経転読  集落を歩いていて、道や川に注連縄(しめなわ)が張られていたり、「お札の付いた竹」や「わら人形」などが、辻に立てかけられているのを見られたことはありませんか。また、注連縄にはワラで作られたゾウリやワラジ、紙垂(しで)(注1)、ナンテンの枝葉、木の札などが下げられていませんでしたか。  これらは外から集落に悪霊や疫病などの災いが、入ってこないようにするために行われる呪術で、「道切り」または「勧請掛け」などと言われている民俗行事です。全国各地で行われていましたが、過疎化や新興住宅地化により廃止になっているところもあります。  大浦半島の南端にある平(たいら)区では、このような「道切り」と厄除・五穀豊穣・無病息災・家内安全などを祈る「大般若会(だいはんにゃえ)」が、「村祈祷」行事として今なお引き継がれ、毎年1月の中旬に行われています(今年は1月13日)。  平区の曹洞宗・長雲寺に午前8時ごろから42歳の厄年の人を中心に、61歳の厄年の人や区役員の協力で、ワラを使って約2メートルの大きなヘビ(ハナオともいう)・ワラジ・ゾウリをつくります。このように大きなゾウリやワラジを履く大男がいると威嚇し、また大蛇は侵入してくる悪霊を追い払うと伝えられています。  完成後、長雲寺において同寺と近隣のお寺の住職により、曹洞宗の法式(ほっしき)(注2)によって、大般若経の転読(てんどく)(注3)が行われ、厄年の人・区役員・寺総代の同席のもと、祈祷が行われます。  祈祷が終わると「道切り」が行われます。ワラの作り物を吊るした竹の先に「大般若経宝牘(とく)洪松山長雲禅寺」と書かれたお札を付け、赤野との境にはワラジを、佐波賀(さばか)との境にはゾウリを、大丹生(おおにゅう)との境にはヘビを置きます。  「道切り」の間、他の人は分かれてお盆に大般若経1巻、洗米(せんまい)(注4)、サカキの葉を載せ、捧げ持って各家を回り、お経をかざし、サカキの葉で洗米をすくい渡します(留守にされる場合は、受け皿を玄関に置いておかれる家もあるとのこと)。各家では、家族全員が洗米をいただきます。  地元の方にお伺いしたところ、平の村祈祷は厄をみんなで分かち合って軽くするとともに、集落や家内の安全などを祈願する行事であるとのことでした。厄年の人を中心に行われる平の「村祈祷」は、相互扶助であるとともに、地域の安全と繁栄を祈る良き伝統行事だと感じました。  皆様におかれましても、是非この行事をご覧いただき、ご利益のおすそ分けを受けられてはいかがでしょうか。(春よ来い 筆)
 注1 紙垂:注連縄や玉串などに垂らす紙片  注2 法式:法会と儀式  注3 転読:大部の経典を扇をひろげるようにパラパラとひるがえし、読むのになぞらえること  注4 洗米:神仏などに供えるため、洗ってきれいにした米

写真=長雲寺での大般若経転読
写真=大きなヘビ、ワラジ、ゾウリが完成


ヘビ、ワラジ、ゾウリ
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