新緑に誘われて、日尾池姫神社から500メートル上流の与保呂水源地へ―。
浄水場の端まで進むと、貯水池の放水路から勢いよく滝の音が響いてきた。溢水は、落差2メートルの石張り16階段を一気に駆け落ちて与保呂川へ。まさに「階段の滝」を見事に演出している。岸谷貯水池は旧海軍の軍用水道として築造され、大正10年6月、容量21万立法メートルの土堰堤(えんてい)が完成。現在、容量18万1000立法メートル、給水能力は1日6800立法メートル。桂貯水池と合わせて着水井(せん)、ろ過池を経て浄化され配水へ。南舞鶴地域5000戸の水ガメである。場内に入ると、かつて桜の名所として賑わった100本の桜の姿はないが、取水隧道(ずいどう)には名和中将の題字「盈科(えいか)」(水が穴に満ちること=学問は努力の積み重ねによって成るのたとえ)が刻まれ、重々しい。また、周りを望めば「与保呂水源の森」全国100選にふさわしく、山々が目前に迫り、昔から守り育てられてきた森林の恵みを肌で感じる…。雨季に増水、排水量はお天気まかせ。滝のしぶきと涼風と深い緑に囲まれた放水路の景観は夏のオアシス。やがて「おいしい水」の話題が各地を馳せる6月1日から「水道週間」。
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