市街地のど真ん中、大門三条の北都信用金庫(旧東舞鶴信用金庫本店)前に、二宮尊徳(通称金次郎)の像がある。高さは約1メートル、台座含めて約1.8メートルの白御影の石製。薪を背負い本を読む金次郎の知名度は高いが、「何故こんなところに…」。尊徳は江戸時代の農政家。少年時代に洪水で一家離散の憂き目をみたが、勉学と勤倹に励み34歳で地主に。後に農村復興や金融機関「報徳社」を設立。その偉業は戦前の修身に登場し、像は旧村の学校に今も残る。尋常小学校唱歌第2学年20曲の中には、「草鞋をつくり、親の手を助(す)け弟を世話し」とあり、唱歌から物事の善悪を教わったとも。像は東信会長の故・古川正一氏の発案で、平成4年9月21日に建立された。無から道を開く勇気と自覚、感謝して勤労に励む尊徳の教えは「温故知新」。カード破産や好景気によるモラルの低下などの中、伝統から新しい価値と意義を再発見していく心構えが必要で、その警鐘として建立されたという。さらに氏は、今の長寿者は幼いころから汗水流して足腰を鍛えたからこそ、いま世界一の長寿国になったと。「敬老の日」。無のどん底から日本は復興し今日へ。高齢者への感謝の気持ちと本当の“豊かさ”とは何か。この日、像の前で失っていた心をもう一度噛みしめた。
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