中舞鶴最大の秋祭り「高倉神社」の祭礼は、江戸時代から続く御所車のみこしが街中を練り歩く…。重さ500キロ、曳き手80人の行列と女みこし2基に誘われて神社の境内へ。社殿まで進むと右側の祠の中に、しめ縄をした大きな石が祀られている。これが古来から“祭神がのりうつる石”と伝えられる「神石(かみいし)」、一名「鞍掛石(くらかけいし)」である。長い浜の海辺に面した高倉神社は、蛇島にも近く、外護者は舟軍、水軍の武将たち。古絵図からも海にかかわる神で、海の祈りを中心とした神社。戦国時代、この辺りは武将の練武場で、石の由来は主祭神(うじがみさま)がこの石に鞍を掛け、馬上姿となって練武されたことから、神が“のりうつられた”として崇敬し、この石をまたぐことを許さず、これを犯した者は必ず祟りあり…と。それ故、病気の霊験あらたかで、この神石に触れた手を痛む患部に当てて祈願すれば、痛みが救われるという伝説がある。明治のころ、海岸沿いの五森街道には20軒ほどの五森村があったが、軍用地として接収され軍の爆薬部に。また、海に突き出た神石は海岸一帯を埋めた際、その一部を境内に移したものである。時代を経ても、この石を身体救護の「神石」と仰いできた先人たちの素朴で純粋な気持ちは、そのまま秋祭りの中にも生き続けていた。心が澄んだ秋空のように―。
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