“春”4月、引土で「まいづるのちえまつり」のポスターを見て、虚空蔵(こくうぞう)祭に参拝―。駅の正面に位置するのが愛宕山。登り口は阿弥陀・薬師・釈迦の3体本尊で、馴染み深い円隆寺。その山頂に火伏せの神、愛宕権現が祀ってある―が、ここで本堂の石段を上がらずに左の参道へ100メートルほど進む。途中に奉納された幟が立ち、健康の輪、智恵の輪をくぐって祠に辿り着く。
これが十三参りの「虚空蔵」さんである。祠は高さ50センチ、幅40センチの扉つき石造り。その中に虚空蔵菩薩を祀り、「なうぼうありきや、おんありきやま」の真言札。当番から御札と御守りを授かるのである。
この山の麓には、半田・上地・中地・下地からなる「引土村」があるが、町と接する下地の「講中」によって毎年4月に祭礼が行われ、現在10戸の参加で継承されている。
元来、十三参りとは、陰暦3月13日(いまは4月13日)に13歳の男女が盛装し、福徳、智恵、音声を授かるため、嵯峨法輪寺の虚空蔵菩薩に参詣すること。昔は、喜多村からも御馳走を持ってここに集い、村人が芝居をしたことも…。
この日、祠の奥では参拝者も招き入れて神酒を交わす小宴を。料理は元気が出るホルモンで最高潮! 十三参りには、小石13個を持って供えればご利益あり、とか。智恵の輪はボケ防止? 帰り道は、振り向かずに真っ直ぐ山を降りる。
伝統が、今なお残る「講中」の深い「きづな」の原点を、ここに見た。
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