猛暑の中、“涼”を求めて久しぶりに西方寺平へ―。昔、真言宗の往悟山西方寺という寺院があり、観音さんのご利益でそのまま地名に。麓の西方寺から山中の一本道を約4キロ登りつめると、そこは海抜230メートルの高原「西方寺平(さいほうじだいら)」である。
宇野尾岳、赤岩山が聳え、平橋から見上げると幾重にも階段状に棚田が広がり、上へ上へと続く…。その棚田の中に数メートルもある“巨岩”がどっしり!と。しかも、あちこちに巨岩が居すわって奇々怪々。驚くことに、以前この一帯には500枚もの棚田が形成され、至る所に無数の岩がゴロゴロと点在しており最悪の状況であった。このため、岩を畦道や岸面に活用してのほ場整備を実施。現在の約200枚の棚田に整地された。が、今も田んぼや道端、屋敷の庭先など30個以上の巨岩が散らばっているという。
ところでこの巨岩の正体とは―赤岩山(669.5メートル)は、大峯山の神霊を赤岩権現と称え、山頂の巨岩がご神体。かつて女人禁制の頂上一帯が霊場で、茶褐色の巨岩が林立しており、棚田の岩と同じ赤みを帯びた堆石岩に似ているのである。それには、赤岩山がえぐれて崩れ、岩がずり落ち、ここに“平”が出来たという地元説に結ぶ。
今、地区では泉と霜尾の名字も増えて12戸。若者も加えて32人の元気村。6000羽の養鶏と無農薬野菜が特産。クーラーは1台もない。そよ風がやさしい。美しい緑の棚田から巨岩が“涼”を呼んで「おいでおいで!」と。
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