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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩106
−サルパ− 自然界で役割果たす

 サルパという動物について、ほとんどの方はなじみが薄いであろう。ゼラチン質の体で海を漂うため、クラゲの仲間と思いがちだが、そうではない。クラゲは触手に小さな毒とげを多数持っているため、イソギンチャクやサンゴと同じ刺胞動物門というグループに属するのに対し、サルパは背骨の原型ともいえる脊索を持ち、魚類やヒトと同じ脊索動物門という大きなくくりに入る。  サルパには全世界で40種類ほどがいる。いずれも通常は外洋を漂って生活し、また体がやわらかく壊れやすいため、研究はあまり進んでおらず、図鑑などでも種名は調べにくい。サルパには、単独で漂っている時期と、多くの個体が数珠のように連なっている時期とがある。海水を絶えず吸い込み、体内にある粘着板でプランクトンをこしとって餌にする。クラゲが主に動物プランクトンを食べるのに対し、サルパの主食は植物プランクトンである。そう思って眺めれば、草食系な雰囲気を醸し出している。  昨年の秋には、日本海でクラゲが少なかったが、その分、サルパは多かった。サルパはときに大発生して漁師さんを悩ませる。クラゲと違って刺さないが、定置網にからんで網が揚げにくくなるからだ。また、発電所の取水口に貼りついて発電機が停まる被害も出ている。  冠島や浅礁のような外洋に面したポイントで潜水していると、潮流にのってサルパが運ばれ、これを磯の魚たちが盛んに食べる光景が見られる。サルパもクラゲも、実は魚たちよりも古い時代からこの海に住んでおり、餌や酸素や光の乏しい環境にも耐えて生活できる。そんな環境で集めてきた栄養分を魚に渡すという、案外重要な仕事を自然界で担っているのではなかろうか。日本海で今年豊漁のブリだって、沖合ではきっとサルパを食べているだろう。そう考えると、サルパやクラゲを悪玉にするよりは、彼らと他の生き物のつながりを理解し、自然のサイクルに合った管理方策を模索する方が建設的かと思う。
写真=サルパの一種の単独個体(左)と連鎖個体(右)。いずれも2010年9月、高浜町浅礁の水深6メートル付近で撮影。
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