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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩112
−ドチザメ− 生態系のバランス保つ

 小学校で海の生き物について講演をしていると、「若狭湾にもサメはいますか」と児童から質問されることがよくある。舞鶴周辺の海で潜水していて、サメを見ることは滅多になく、まれに出会う種類もおとなしいものばかりだ。写真のドチザメは、主に底生生物を餌にしており、人を襲うことはない。ただし、一応サメなので鋭い歯はあるし、動きは力強い。しかも撮影時、岩の下で 10匹くらいの群れを作りぐるぐる回っていた。本気を出されたらこちらに勝ち目はない。  以前、舞鶴市田井の定置網漁船に乗せてもらったとき、サメが網に入ったことがあった。巨大な魚の影を見て、漁師さんたちは一瞬、「マグロか」とざわめいた。マグロ1匹を水揚げすれば、新車1台分ほどの値がつく。網をたぐり寄せてみるとサメの姿が現れ、落胆しつつも、その巨魚を網の外へ逃がす手際が見事だった。  サメとマグロは、分類上はまったく異なるが、流線型の美しい体、呼吸するために泳ぎ続けねばならないこと、体温を海水よりも高く保つ仕組みなど、多くの共通点を持つ。詳しくは、最近、中村泉先生が上梓された『マグロ学』を読まれると良いだろう。帯のコメントには「マグロの必読書」とあり、お盆休みにごろりと寝転がって読むのに最適である。もっとも、写真のドチザメは、休んだままでも呼吸できる由、座敷マグロに近い。  マグロは一度に1千万もの卵を産むのに対し、多くのサメは少数の仔ザメを産む。その点サメは、大半の魚よりむしろ、哺乳動物に近い。一度に産む数が少なければ、それだけ絶滅のリスクも高い。映画『オーシャンズ』では、フカヒレ用にヒレだけを切ってサメを捨てる漁業があることについて、リアルな映像で問題提起をしていた。一般に、食物連鎖の頂点に立つ動物は、しばしばその存在により生態系のバランスを保つ。上位捕食者であるサメを守ることは、結果的に海の恵みを末永く享受することにつながる。心ある漁師さんは、そのことを知っているのだろう。
写真=2011年7月26日、小島北の水深29メートルで見たドチザメ。全長1.5メートル。
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