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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩119
−コノハミドリガイ− 目立たず危険なやつ

 コノハミドリガイは、3センチほどにしかならない小さなウミウシの一種だ。木の葉を縦に2つ折りにしたような形で、薄緑の地に白と黒の斑点を持つ。地の色には白や黄色のバリエーションもある。舞鶴湾内の長浜では緑色の個体が多いのに対し、高浜町音海ではもっぱら白い個体を見かける。緑藻類が繁茂し植物プランクトンの多い長浜では緑色が良いカモフラージュになり、白砂が多く岩も石灰藻に覆われた音海では白色の方が目立たないのだろう。  とはいえ、背面の縁どりには黒と黄色の線がくっきりと入るため、この部分に関しては「私は危険」と主張した警戒色に見える。そう考えるとこの生物、目立ちたがりなのか控え目なのかよくわからない。ウミウシは一般に毒を持つが、この種は大きな魚には効かない程度の毒を持つのではないか。そこで、遠目には目立たず、近くで見たら危険信号、という色彩パターンを採用したのだと思う。  ところでこの冬、舞鶴は記録的な豪雪に見舞われ、陸上では見たことのないような景色が広がった。海の中はしかし意外に普通で、湾内の海底水温は11℃ほどある。例年のこととして、この水温ではメバルは穴に入り、カワハギは岩陰に身を横たえる。魚に食べられる心配から解放された小動物たちは、ここぞとばかりに動き回っては餌を食べる。ウニ、ナマコ、そして写真のようなウミウシ類はそんな例である。  音海の内浦湾の様子は、例年と少し違う。というのは、ここは高浜原子力発電所の温排水の影響を受けるため、例年なら真冬でも南方系の魚が見られるからだ。この2月に原子炉が停止し、温排水の供給が途絶えてから、魚たちの寝静まった夜の海のような景観を呈している。局所的温暖化の恩恵を失った南方系の魚たちの行方について、今後も観察を続けたい。
写真=長浜(左)と音海(右)のコノハミドリガイ.それぞれ2006年11月および2012年2月に撮影。
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