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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩121
−マガレイ− 寄り目で獲物に照準

 昨年5月の大潮の日、カワハギの摂餌行動を観察する目的で潜水していたところ、ナマコの産卵シーンに遭遇した。「ナマコの資源を管理する上で産卵行動の情報は重要なはず」と、ナマコを専門に研究する同僚の南さんを誘って、この4月の大潮となる土曜日に潜水調査に出かけたところ、ナマコは餌を食うばかりであったが、立派なカレイを見つけた。  写真のカレイは、マガレイという種類のようだ。調査中に撮影した魚の名前に不安があるときは、同僚の甲斐さんに相談する。その甲斐さんが「多分」というくらいだから、カレイの類の見分け方は案外難しい。ちなみに若狭湾の底曳きで多く獲れるのはアカガレイで、当地のスーパーではしばしばこれが「真ガレイ」として並ぶ。カレイにも結構な数の種類がいて、各地方で多く獲れる種類のカレイをマガレイと呼んでいる。  立派な子持ちのカレイなら、ちょっと真面目に昆布でだしをとり、少し薄味の煮付けにしたい。一方、小さなカレイがごく安くで売られていることがあり、これはムニエルにすれば縁側までおいしく頂ける。フライパンを時々ゆすりながら、魚の表側が7割方焼けてから返すのが上手に仕上げるコツだ。  マガレイの両目は非常に接近しており、口は小さい。ゴカイや貝などをついばんで食べるには適した形といえる。一方,ヒラメの口はもっと大きくて、両目は離れている。泳ぐ魚に飛びついて捕食するヒラメでは、遠近感を確保するために両目は離れている必要がある。  マガレイは通常はもっと深い海に住むが、春には産卵のため岸に近づくらしい。きっと来年の今頃は、「カレイの産卵について調べよう」との口実で海に潜っていることだろう。会議に出ずに海に潜っていることをとがめられたら、「そんな見えない鎖で連なっていくのがフィールド研究」と開き直るしかない。
写真=2012年4月21日、高浜町音海の今戸鼻の西、水深30メートルで遭遇したマガレイ。体長40センチ。
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