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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩122
−マダラハナギンチャク− 海大荒れで露出する

 海に潜るには、よく晴れて風穏やかな日の昼間、大潮の満潮に向かう頃合いが良い。海底まで光が届くため海の中は明るく、沖の綺麗な水が岸近くに差し込み透明度も高くなる。そんな日は、運ばれてくるプランクトンを食べようと小動物や小魚が活発になるし、これらを餌とする大型の魚との遭遇確率もアップする。  写真のマダラハナギンチャクのように、海底に固着している生き物にとって、潮の動きはことさら重要である。どれだけ触手を延ばしたところで周囲20センチほどの餌しか捕らえられない彼らにしてみれば、潮の運ぶ餌が頼りとなろう。  マダラハナギンチャクは、内湾の砂泥底でごく普通に見られるイソギンチャクの一種だ。イソギンチャクは必ずしも磯にいるとは限らない。砂や泥の海底に生息し、たなびくような触手のグループを、ハナギンチャクと呼んでいる。その中で、外側の触手にまだら模様の目立つのが、写真の種類だ。  舞鶴湾でもごく普通に見られる種類ながら、このところ以前とは様子が異なる。通常、ハナギンチャクは柄の部分が海底に埋まっており、触手のみを四方へ延ばすが、この個体はどう見ても首が長過ぎなのである。また、刺激を受けたハナギンチャクは、通常は完全に砂の中に隠れる。ところが、この個体をそっとつついてみたところ、表面に出ている部分が多すぎて砂の中に隠れきらない。こうなったのは、おそらく先日の時化によるものだ。去る4月3日に日本各地で台風並の風が吹き、舞鶴湾も大荒れとなった。その際、海底の泥が流されて、露出部分が多くなってしまったのだろう。ハナギンチャクの気持ちになると、はなはだ心もとないが、穏やかな日が続いて海底に泥の降り積もるのを待つしかない。
写真=2012年5月14日、舞鶴市長浜の水深8メートルで見られたマダラハナギンチャク。直径は30センチほど。
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