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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩123
−マボヤ− 東北の夏の味覚

 ホヤを初めて食べたのは、大学院に進学して間もない頃、先輩に連れられて行った居酒屋でのことだ。皮に盛られた朱色の身が旨くて、ひとりでぱくぱく食べたら皮しか残らず、先輩に叱られた。数ある海の幸の中でも、相当に美味な部類に入ると思うが、独特の風味を好まぬ人もいる。  様々な種類のホヤがいる中、食用として流通するのはもっぱら写真のマボヤである。「ホヤ貝」と称されることもあり、貝の仲間と思われがちだが、尾索動物といって、脊椎動物の祖先にあたり、貝よりは魚に近い。生まれて間もない頃はオタマジャクシのような形で泳ぎ周り、適当な岩場を見つけると固着生活を始める。海水の入り口と出口とがあり、心臓のように拍動することにより海水から餌をこしとって食べている。  若狭湾ではややマイナーなホヤであるが、東北地方では夏の味覚の代表ともされる。筆者が調査のため頻繁に訪れる気仙沼市の舞根(もうね)湾でも、岩場に多数のホヤが見られる。「森は海の恋人」運動で知られるカキ養殖業者の畠山重篤さんは、舞根湾でホヤの養殖も営んでいたそうで、これらが逃げ出したものもあるのだろう。  三陸の海は、ホヤやカキの餌となるプランクトンが豊富であるため、これらの養殖に適している。三陸の海が豊かなのは親潮と黒潮がぶつかるためと小学校の社会科で習った気がするが、それ以上に重要なのは森から川を経て海に運ばれる栄養分だろう、と畠山さんは説く。  その畠山さんが、この7月8日に舞鶴に来られ、中総合会館にて講演のご予定である。会場は拙宅から徒歩約2分の所でありながら、海外出張中の筆者は拝聴できない。読者の皆様に積極的な参加をお願いする次第である。
写真=2012年3月7日、舞鶴市瀬崎の水深15メートルで見られた全長12センチほどのマボヤ。
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