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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩125
−アオヤガラ− 矢のように瞬時に加速

 アオヤガラは目立って細長い魚である。漢字では「青矢柄」となり、矢の柄の部分に似た青い魚ということだろう。同じ科のアカヤガラという魚は、名前の通り体色は赤く、もう少し太く、大変美味な魚とされており、ときに舞鶴の鮮魚店にも並ぶが、アオヤガラが当地で売られているのを見たことはない。細長すぎて、料理するにも困るだろう。この魚、ひょうきんな見た目とは裏腹に、小魚を吸い取るようにして襲って食べる獰猛な捕食者だそうだ。  本州の南の方、あるいは沖縄あたりで潜水していると、岩場やサンゴ礁にひそむアオヤガラをしばしば見かけるが、若狭湾では滅多に見ない、というか、筆者は今回初めて見た。実際、この日の潜水調査でお世話になった音海のダイビングショップの二人のガイドはいずれも、これまで若狭湾で見たことはないとのことだった。また、京都府漁連の市場に水揚げされる魚を頻繁に調査している同僚の甲斐さんによれば、「アカヤガラを100匹見るうちに、アオヤガラを1匹くらい見る」という。  細長い体型の捕食者には、待ち伏せ型のものが多い。細長い体は、水中で瞬時に加速して餌を捕らえるには有利なためである。また、食べられる小魚の側からすれば、真正面からは小さく見えるこの魚の存在に、接近するまで気づきにくいということもあるようだ。  瞬発力はしばしば、持久力を犠牲にして成り立つ。この魚の形は、長距離を泳ぐにははなはだ不適と思われる。若狭湾で珍しいとはいいながら、本種が北海道で採集された例もある。小魚を追ううちに海流に乗ってしまい、漂流する個体もあるのだろう。魚を追ううちに我を忘れて泳いでしまいがちな自分への戒めとしたい。
写真=2012年8月16日,高浜町音海の今戸鼻の西,水深10メートル付近で見つけた体長35センチほどのアオヤガラ。後ろに写っているのは潜水ガイドの伊東さん。
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