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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩126
−オキザヨリ− 溺れるフリして瞬殺

 オキザヨリは、サヨリと名がつくがダツの仲間である。ダツといえば、沖縄の漁師にはサメよりも恐れられている。特に夜間の潜水では、水中ライトに向かって突っ込んで来ることもあるので注意するように、と学生時代の沖縄夏合宿で脅かされたものだ。前回に紹介したアオヤガラ以上に、典型的な待ち伏せ・突進型の魚なので、瞬発速度は非常に速く、歯も鋭い。  オキザヨリの銀白色の腹は、陽の光と重なって下方からは見えにくく、濃紺の背中は、青黒い海にとけ込む上で役に立つだろう。この魚の特徴として、えらぶたの上を横切る1本の線がある。この模様は、水中で遠目に見ると、弱った小魚が溺れかけている風にも映る。そこで、外洋の表層付近を漂いながら待ち伏せし、えらぶたの模様につられて近づいた魚を、鋭い歯で捕らえてひと飲み、といった摂餌戦略をとっているのかもしれない。  先月のこと、テニスクラブのオーナーで釣り師の寺内師匠が、「こんな魚が釣れたんやけど、名前わかる?」と言って冷蔵庫から取り出してきたのが、このオキザヨリだった。以前にも若狭湾で潜水中に何度か出会ったことのある魚であるが、鮮魚店に並ぶ魚ではない。オキザヨリが食卓に上るのは、釣り師か、釣り師を友に持つ者くらいだろう。食べ慣れた旬の魚しか召し上がらないという師匠にかわって、ありがたく持ち帰り、ムニエルにして頂いた。小骨が多く大味でかつちょっとクセもあり、本家のサヨリにはだいぶ劣るものの、ある意味魚らしい味といえた。  その寺内師匠が「釣った魚について調べられる本が欲しい」とおっしゃるので,最近筆者も愛用している「釣魚1400種図鑑」なる本を買って進呈した。「代金は」と言われて、「魚で頂ける方がありがたいです」とお答えしておいた。
写真=2012年9月12日、冠島北の中津神付近、水面直下で見られたオキザヨリ。体長60センチほど。
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