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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩130
−ニシキハゼ− 心優しいハゼ界の巨人

 『日本のハゼ』という本によると、世界には2000種、日本国内にも550種ほどのハゼがいるそうだ。熱帯から寒帯の海と川、果ては地下水に住む種類もおり、さまざまな環境に適応したグループと言える。オーストラリアには成熟しても体長8ミリにしかならないハゼがいて、脊椎動物で最小ということになっている。なお、京大水産実験所でハゼについて研究する松井さんによれば,若狭湾で55種類のハゼが確認できているとのこと。  若狭湾で潜水中に見られるハゼのうち、比較的大きくて目立つのが、このニシキハゼである。ニシキと名のつく動物は、ニシキヘビにニシキゴイと、大きくて派手な色彩のものが多い。小兵の仲間が多いハゼ界にあって、ニシキハゼは確かに大柄で、しかも青にふちどられた橙色のラインがあざやかである。  ここで、ハゼの向こう側に写っているのは、ベラ科の魚、キュウセンの稚魚である。キュウセンは内湾の藻場でよく釣れる魚で、塩焼きや煮付けで召し上がったことのある方もいるだろう。成長したキュウセンは、海藻や砂に隠れたカニやエビ、ゴカイなどを食べる。ところがこのキュウセンの稚魚は、どうやらハゼの体の表面に付着した寄生虫を掃除しているようなのだ。  寄生虫をクリーニングする魚として、サンゴ礁に住むホンソメワケベラという魚はよく知られるが、他の種類のベラも、稚魚のうちはしばしば寄生虫を餌とする。ハゼやフグなど、海底近くにいて、動きの比較的遅い魚は、寄生虫が着きやすい。一方、ベラの類は小さな餌をついばむのに適した形の口なので、稚魚のうちは他の魚に着いた寄生虫を食べることができる。つまり、ハゼとベラの共生関係、ということになる。  自然界は、弱肉強食と言われる。しかし実際のところ、いろんな生き物が、持ちつ持たれつで案外うまくやっているのではないか。そんなことを考えさせられる光景であった。
写真=ニシキハゼ(手前、体長16センチ)とキュウセン(奥、体長3センチ)。2003年11月18日、舞鶴市瀬崎の水深7メートルにて撮影。
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