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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩133
−カミクラゲ− たっぷりの髪は皆の憧れ

 冬から春にかけて、カミクラゲという種類のクラゲをしばしば舞鶴湾内で見かける。長い髪を振りほどいたかのような触手から、この名がついた。触手の様子は常時変化し、きれいにときほぐした状態で下ろされていることもあれば、縮れていたり、また写真のようにひどく散らかした状態の場合もある。波に揺られるなどの刺激を受けると「みだれ髪」状態となるようだ。いずれにせよ、Q太郎君や波平さんが見ればうらやむばかりの見事な髪である。
 このところ2ヵ月に一度訪れている東北の気仙沼でも、潜水中にカミクラゲを頻繁に見る。気仙沼では、傘の高さが1センチに満たない個体から10センチ近い大型個体までおり、近くで繁殖していることがうかがえる。一方、舞鶴では4センチほどのものが多いことから、近くでは繁殖しておらず、どこかから運ばれて来るのだろう。
 以前、保育所で講演した折、園児から「クラゲには目がありますか」と質問された。クラゲには通常、傘のふちに眼点と呼ばれる原始的な眼があって、これで明暗を区別することができる。写真のカミクラゲでは、触手の生え際に赤紫の点が並んでいるのがそれだ。眼点でほどよい明るさの場所を選び、触手でプランクトンを集めては食べているのだろう。クラゲなので刺されれば痛いはずだが、冬場に現れる種類で、触手はそれほど長くもないため、筆者は刺されたことはないし、刺されたという話もきかない。
 クラゲには通常、ポリプといって、小さなイソギンチャクの形をして、岩壁や貝殻などに張り付く時期がある。このカミクラゲを含め、多くのクラゲでは、ポリプ期の生態について不明であり、どこにいるのかすらわかっていない。当たり前に見られる生物にも、謎は多い。だからこそ海の研究は、やりがいがあるのだ。
写真=2013年3月6日、舞鶴市長浜の水深2メートルで撮影したカミクラゲ。傘の高さは4センチほど。
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