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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩137
−チョウチョウウオとトゲチョウ− 国際関係の縮図を見た

 かつてない酷暑の影響は、海の中にも現れている。毎夏訪れている宮津市島陰の岩場でも、水中の様相は例年と明らかに違っていた。中でも驚いたのは、チョウチョウウオとトゲチョウチョウウオの幼魚がいたことだ。同じ科の魚として、京都で初記録となるゲンロクダイについて、昨年の11月に本コーナーで紹介した。今回見つけた2種類もまた、筆者は若狭湾でこれまでに見たことがなく、単独でも珍しいところ、両種をすぐ近くで見たためなお驚いた。
 今年刊行の魚類検索図鑑によれば、チョウチョウウオは津軽海峡付近で発見例があり、比較的冷たい海でも生きられる。一方トゲチョウの方は、日本海での北限は兵庫県となっており、宮津市島陰で観察した個体は記録を塗り替えたことになる。さらに、島陰で潜った翌日に、福井県の音海を訪れたら、そこにもトゲチョウがいたため、水中で「うひょー」と叫んでしまった。2日連続の記録更新である。
 島陰では、まずチョウチョウウオを見つけ、これを観察していたら、あとからトゲチョウが現れると、前者が後者を猛然と追い回した。両魚種とも、サンゴ礁域ではなわばりを形成する。これは、特定の場所をすみかとし、そこに生息する餌を独占するために進化した行動であろう。こうした攻撃行動は一般に、近縁の魚の方が、餌の種類が重複するため顕著である。実際、今回観察していても、周辺にいるホンベラやアミメハギといった魚は攻撃を受けていない。
 話はややそれるが、世界中の各地で、隣接する2国の国民は仲が悪い、という状況が観察される。共通の資源を奪い合う、歴史上の確執がある、あるいは似ていればこそ争いが生じる、ということもあるのだろう。
 ひるがえって、若狭湾にやってきた愛くるしい珍客たちに目を向けると、レアモノ同士、仲良くすれば良いのに、と思うのであった。
写真=トゲチョウチョウウオ(左)とチョウチョウウオ(右)。後者は前者を追尾するが、周辺にいるホンベラ(右下)やアミメハギ(左上)には目もくれない。2013年8月26日、宮津市島陰の水深3メートルにて。
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