ヨコスジフエダイは、横一文字にくっきりとした線のある、フエダイ科の魚だ。しごくわかりやすい名前、と思っていたところ、今年の夏、臨海実習に参加した学生から、「魚は頭からしっぽにかけてを縦と観るのだから、これはタテスジではないですか」との意見が出た。鋭い突っ込みである。
水温の異常に高かった今年の夏、海にもたらされた変化の1つが、この魚が非常に多いということだ。以前から舞鶴湾内で見かけることはあったが、今年は100尾ほどの群れでいたりする。宮津や福井県の高浜にも多いことから、対馬暖流の上流にあたる日本海南部のどこかで大量に発生し、稚魚のうちに運ばれてきたのだろうと想像がつく。ただし、陸から離れた冠島周辺では不思議と少ない。南の海から漂流してくる稚魚とはいえ、陸地と島とを何らかの方法で区別して定着しているのだろうか。適度なにごりを好む性質があるのかもしれないし、陸上由来のにおいを感知している可能性もある。
この魚、なわばりを作って他の魚を追い払う行動もとれば、群れも作る。そして成長はやたらと速い。少し心配なのが、もともとこの地で暮らしているメバルやマダイといった魚の餌を奪い、駆逐してしまうこともあるのではないかということだ。
どん欲な魚だけに、マアジを釣っていたら一緒にかかることがある。これまた臨海実習生が、釣ったアジを唐揚げにしてくれて、その中にヨコスジフエダイが混じっていた。アジに比べると骨が少し堅いものの、唐揚げなら、頭からしっぽまでおいしく頂ける。
写真=2013年9月14日、舞鶴市長浜の水深4メートルにいたヨコスジフエダイ。体長8センチほど。
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