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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩14
−「アメフラシ」−
まさに、欲望の権化!

以前、地元の小学生からのeメールによる質問で、「どうしてアメフラシはアメフラシという名がついたんですか」というのがあった。「梅雨どきに沢山現れるからかなあ」と思っていたが、念のため調べてみるとどうやらそれだけではない。アメフラシは押すと紫色の汁を出す。これが水中では雨を降らすようだから、という説もあるそうだ。アメフラシを含むウミウシの仲間は、巻き貝の類が進化して、殻を失ったものだ。殻を持っていないのはいかにも無防備だが、体の中に毒を蓄えているので、そう簡単には食われない。にも関わらず、アメフラシを食ったとか食わせたとかいう話をあちこちで聞く。  舞鶴在住の友人が以前、市内の某国営施設の食堂に勤めていた折、職場の先輩が興味半分でアメフラシの刺身を作ってくれたそうだ。我が友人はそれに「わさびと醤油をつけ、よーく噛んで食したところ、3日間ほど口の中がしびれた」という.  アメフラシを珍重して食べる地方もある。島根県の隠岐諸島では、茹でて毒抜きしたアメフラシは祭りの料理に欠かせないのだそうだ。かく言う我が水産実験所でも、以前は新入生を歓迎する宴では必ず茹でたアメフラシを薄切りにして供し、「今日は特別な日だから、お前たちにアワビを食わしてやる」と言って食べさせていたものだ。  アメフラシは舞鶴あたりだと五月頃盛んに交尾をし、梅雨時には細麺のラーメンのように連なった卵の塊を産む。小学生の頃、これを初めて見た筆者には、ケーキのモンブランの上に乗ってるうにゅうにゅに思えて、やはり食べてみたい衝動に駆られた。  写真のアメフラシは、ちょうど交尾をしているところだが、同時に手前の個体は盛んに海藻のアオサをむさぼり食っている。そして後ろの個体はといえば、ときおり糞まで排泄している。まさに、欲望の権化!
写真=長浜の水深1メートルで観察されたアメフラシ。体長は25および30センチ
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