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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩141
−ヨウジウオ− 馬面魚でまた来年!

 2002年に始めた本コーナーも、来春でちょうど干支が一巡する。例年、この時期には翌年の干支をネタにしており、来年はウマ年。馬といってまず浮かぶ魚にウマヅラハギがあるし、また中国語で馬頭魚とはアマダイのこと。さらに英語でhorse mackerelとはマアジを指すが、いずれもすでに本欄で紹介した。horsefishという英名を持つ、すこぶる馬面なアジ科の魚が大西洋にいるらしいが、若狭湾はもちろん、本邦沿岸では見られない。
 ではそもそも、馬面とはどういうことかと考えると、端的には、目と口が離れていることではないかと思い当たった。そこで、既成の魚種名にとらわれず、馬面な魚を勝手に選んでみて、その筆頭と思われたのが、このヨウジウオである。
 ヨウジウオは若狭湾のごく浅い藻場に生息しており、海藻にからまっているのをよく見かける。爪楊枝になぞらえるにはあまりに細長く、くねくねしており、ぱっと見はむしろ針金に近い。海藻に擬態していて、動きが遅いので、見つけられれば、手づかみでも容易に捕まえられる。普段は海藻にからみついたまま、流れてくる動物プランクトンをスポスポと吸い込んで食べている。茶色い海藻には茶色の、緑の海藻には緑のヨウジウオがからんでいるので、機会あらばさがしていただきたい。
 本種はタツノオトシゴと近縁な魚だ。というか、タツノオトシゴはヨウジウオ科の魚、というのが正しい言い方になる。この科の魚は、雌が雄の腹に卵を産みつけ、雄がこれを抱えて育てる。つまりこの魚、ウマヅラなだけでなく、イクメンな魚、なのである。春に産み出されたヨウジウオの子は、その時期に枯れてちぎれる海藻、すなわち流れ藻とともに、しばし漂流生活を送ったのち、初夏に沿岸の藻場へと定着する。健全な藻場があってこその魚、といえる。
写真=2003年12月23日、舞鶴市長浜の水深1・5メートル付近でみつけたヨウジウオ。馬っぽい顔の魚である
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