アカウニは、若狭湾における代表的な食用ウニの一つだ。同じく食用となるムラサキウニが夏の始めに産卵するのに対し、アカウニの産卵期は晩秋である。したがって、海水浴の時季にムラサキウニを割ってみると、身がつまっておらず、がっかりすることが多いが、その頃のアカウニは身入りが良い。
ただし、夏場にはアカウニはたいてい岩の下にいるため、かなり見つけにくい。真冬になると、写真のように岩の上をはい回り、中には海藻をよじ登る姿も見かける。
ウニの天敵は、イシダイやカワハギなどの魚だ。筆者のペットの、というか研究材料のイシダイは、ウニを水槽に入れると、丈夫な歯で割って食べてしまう。カワハギも歯が強いので、不用意なウニがいればひっくり返し、弱点である裏側からかじって食べることができる。
この日の水温は11度。イシダイもカワハギも、水温が13度を下回るとほとんど餌を食べない。そこで、天敵のいない間にウニたちは、のびのびと(という表現があまり似つかわしくない生き物だが)岩の上で餌を食べることができるのだ。
ウニの主な餌は海藻である。ウニがあまりにも頑張って餌を食べると、海藻はなくなってしまう。通常、ウニが堂々と餌を食べられるのは、魚たちの活動が鈍る冬場か、もしくは魚たちの寝静まる夜間に限られる。ところが、ウニの捕食者がほとんどいないような環境では、ウニはいつでも餌を食べられるため、やがて海藻を食べ尽くしてしまう。かくして、海藻の生えない岩場に、中身がからっぽのウニが散らばる、という残念な光景が広がる。これを防ぐには、結局のところ、大型の魚、ウニ、そして海藻といった磯の生態系を、ひとつのセットとして保全していくしかないように思う。
写真=舞鶴市瀬崎の水深6メートルでホンダワラ類の海藻を食べるアカウニ。2014年1月28日撮影
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