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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩144
−オキアミ− 桜の趣き はかなく散る

 海水温の最も下がる早春の潜水でのこと、先に海に入ったバディーの高橋研究員が、「オキアミみたいなものがいます」と教えてくれた。オキアミといえば、釣り餌である。もしや釣り人の撒いた冷凍オキアミが泳ぎ出したか、とも思ったが、そんな筈もない。水の冷たさに歯を食いしばりつつ探すと、なるほど、オキアミらしき生物がそこここを泳いでいる。
 しばらくすると、藻場を覆い尽くすオキアミの大群が現れた。生時のオキアミには、満開に向かう桜の趣きがある。
 オキアミといえば、通常は沖合の冷たい深海に生息する生物として知られる。南氷洋に分布するナンキョクオキアミはクジラやペンギンの餌となり、また釣りの差し餌用に漁獲される。本邦沿岸に多いのはツノナシオキアミで、三陸沖にて漁獲され、撒き餌として利用される、日本海にも後者は少なからずおり、冬場の鮮魚店に並ぶオキギス(正式にはニギス)やハタハタの主な餌はこれである。実際、これらの魚の腹を割くと、オキアミばかりが出て来る。ニギスを粕汁の具材等として鍋に入れると旨い脂がぱっと浮かぶが、これは餌のオキアミに由来するのであろう。
 沖にいるはずのオキアミがなぜ、背の立つ深さの藻場にいるのか。これは、今年の冬、沿岸の水温が例年になく低下したことによるものであろう。日本海の各地で深海のダイオウイカやリュウグウノツカイが捕獲されたのもまた、大地震の予兆というよりは、沿岸の水温が下がったため、岸近くまで迷い込んだものと考えられる。
 写真の群れを見て3日後、同じ場所でまた潜水した。オキアミの群れをさらに観察するつもりだったが、そこには、食べ散らかされた殻だけが残っていた。花のようなものたちだけに、はかなくも散り果てたようだ。
写真=2014年2月25日、高浜町音海の水深1メートルで見たツノナシオキアミの群れ
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