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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩146
−スナイソギンチャク− 強い毒…ある?ない?

 スナイソギンチャクは、砂地の海底でしばしば見かけるイソギンチャクの一種だ。触手はむっちりと太く、白や黄色、ピンク、褐色など、人肌の色ほどに変化に富む。細かな白い斑点があり、これらは刺胞の束だそうだ。
 砂の下に隠れた下端部分は小石などに固着し、その上は砂中でふくらむことにより、踏ん張りをきかせている。刺激を受けると砂に隠れる。昼間よりも夜間、また流れの強い日の方が触手を出していることが多いようだ。
 移動能力は極めて低いため、海流により運ばれる餌を手さぐりで求めることになる、子供向けの図鑑では、近づいた小魚に刺胞を発射して触手で捕える様子が、連続写真で示されていた。
 図鑑には、「強い毒を持つ」「人を刺す」などと書かれており、ダイビングの講習の際、危険な生物として教わる。しかし以前、岡山大学の臨海実習をお手伝いした際、同大学の秋山貞先生は、「このイソギンチャクに刺されたって話をきいたことがないですよね。案外、たいした毒は持ってないんじゃないか」とのご意見だった。はたしてどれくらい強い毒なのか、確かめてみる勇気は筆者にはない。
 先日、イソギンチャクの個性についての論文が著名な学術雑誌に掲載されていた。個体ごとに違った行動が繰り返し現れれば、行動学ではpersonalityすなわち個性と呼ぶことになっている。その実験では、イソギンチャクに水を吹きかけると、触手を縮めてから再び伸ばすまでの所要時間が、個体ごとに一定している、といった内容だった。
 個性の本質は神経の働きの違いと考えれば、イソギンチャクの個性というのもアリなのだろう。ほとんどの読者の方にとっては、まったくもってどうでもよいことであろうが、魚の心理を研究する者としては、大いに参考になった。
写真=2003年10月23日、高浜町音海内浦湾の水深5メートル付近にいたスナイソギンチャク。夜間潜水時の撮影である
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