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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩150
−ショウワアメフラシ− 昭和天皇にちなんで命名

 水中で見かけた気になる生物は、フェイスブックにアップすると、有益なコメントを貰えることが多い。先日も、「アメフラシの泳ぐ姿を初めて見た」として下記の写真を載せたところ、福井県海浜自然センターの西野ひかるさんという方からご教示を頂いた。これはただのアメフラシではなく、ショウワアメフラシという種類なのだそうだ。この夏、同センター近くでも見つかり、その記事が新聞に掲載されたとのこと。確かに、普段見るアメフラシの色はもっと濃くて、白班は細かく、こんなに可憐な水玉模様ではない。
 本種が日本で初めて記録されたのは、1949年のことだそうだ。神奈川県葉山で漁師さんの網にかかった個体が、皇居に持ち込まれた。なぜ皇居かというと、昭和天皇が海洋生物のご研究をされていたからだ。しかし、普通のアメフラシと違うことはわかっても、同じ種類はその後しばらく見つからず、謎となっていた。50年の時を経て2003年に静岡で多数の個体が採集され、昭和天皇にちなんでショウワアメフラシと命名された。ちなみに、オーストラリアには同種が生息している。
 この種の最大の特徴は、泳ぐということだ。実際、これまでに出会ったアメフラシは、海底に転がっているか、小さな個体でもせいぜい海藻をよじ登るだけで、はなはだものぐさな生き物である。ところが本種は、翼足と呼ばれる羽根のような膜を動かし、頭も上下させ、競泳のバタフライに似た動作で泳ぐ。
 とはいえ、この程度の泳ぎで赤道を越えて来たとも考えにくい。昭和の頃にごく稀であった理由として、当時の個体は卵か幼生の時期にタンカーのバラスト水とともに豪州から運ばれて来た可能性がある。一方、平成に入って多く見られるようになったのは、これらが本邦周辺でも繁殖し始めたためと想像できる。定着しつつある外来種と考えると味気ないが、その泳ぐ姿は一見の価値がある。
写真=2014年8月29日、宮津市島陰の水深1・2メートルで見つけたショウワアメフラシ。体長18センチほど
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