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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩152
−ツメタガイ− 作品だけ残す砂下の陶芸家










 ツメタガイは、日本の砂浜を散歩していて、最も普通に見られる巻貝の一つである(写真左)。つるりと丸い茶色の貝殻が特徴的だ。子供の頃にこの貝を拾い、手のひらへの収まり具合や丸くほっこりした感じがとても気に入っていた。しかし図鑑を読むと、「砂中の二枚貝の殻に穴を開け中身を食べる」と書かれており、獰猛な性質を知って少しげんなりした。実際、同時期に砂浜で拾った二枚貝には、紐を通したくなるような2ミリほどの丸い穴が開いていた。
 ツメタガイの仕業としてもう一つ有名なのが、砂茶碗(すなじゃわん)である(写真右)。これは本種が卵を産んで砂でかためたもので、砂で作った茶碗をひっくり返したような形をしている。
 貝殻も砂茶碗も頻繁に見つかるのに、生きたツメタガイにはほとんどお目にかからない。これは、彼らは昼間、砂に潜っていることが多いためだ。
 砂の中から生きた巻貝を見つけるコツを、フィリピンで潜水調査中、現地のダイバーから教わった。砂地の海底をよく見ると、不規則な線が描かれていることがある。その線の途切れたところを掘ると、あら不思議。そこには巻貝が隠れているではないか。  この方法で砂中から掘り起こしたのが、写真のツメタガイである。殻の大部分は膜で覆われており、右端にはカタツムリのようなツノも見える。撮影のあと、ツメタガイはすみやかに砂中に戻っていった。
 ツメタガイはアサリを捕食するため、有害生物として駆除している自治体もあると聞く。しかし彼らもまた、魚やカニ・タコなどに食べられぬよう、砂に隠れて暮らす。アサリを含め、海の生き物を本気で増やしたいなら、まずは適切な住み場所を確保し、生態系全体を守るべきだ。天敵のツメタガイの、そのまた天敵がいてこそ、アサリの資源も安定するだろう。
写真左=砂から掘り起こされたツメタガイ。殻の直径5センチほど。2014年8月29日、宮津市島陰の水深2メートルで撮影
写真右=ツメタガイの卵塊、砂茶碗。2014年7月23日、宮津市機崎の水深2・5メートルで撮影
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