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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩153 |
−ムツ− 深海に住む旨いヤツ |
錦織圭選手の活躍は、日本人のテニス愛好家に夢と希望を与えてくれる。体格の不利を技術と粘りで逆転する姿に、我が国そのものを重ねて見る人もいるだろう。加えて、日本海に面した松江出身と聞けば、舞鶴在住のテニスフリークとしては勝手に親近感を憶えてしまう。その錦織選手の好物は、ノドグロだそうだ。 ノドグロは水深100メートルより深い海にいる魚で、潜水中に見ることはない。その煮付の美味なることは都会の食通の間でも知られるのであろうが、刺身の旨さを味わえるのは、日本海沿岸に住む者の役得かもしれない。口の中が黒いためノドグロと称されるこの魚、標準和名はアカムツである。 以上は、本稿で紹介するムツにつなげるための前振りである。アカムツがその名の通り鮮やかな赤であるのに対し、ムツは褐色で、体型はよりスリムである。もっとも分類学上は、ムツはムツ科、アカムツはホタルジャコ科で、それほど近縁なわけではない。ムツの成魚は水深200メートルもの深い海にいるが、幼魚はしばしば水深10メートル前後の浅い海の底近くで群れをなす。 冠島周辺の藻場でこの魚に出会った際は、ガイドの圭介さんに指摘されるまでそれと気づかなかった。若狭湾ではそれまで見たことがなかったためだ。当地ではマアジの幼魚が優占しており、雲霞のごときマアジの大群から少し離れた海藻林の隙間で、十数個体のムツが遠慮がちに群れを作っていた。 南日本の磯では、ムツの幼魚を頻繁に見かけるし、定置網にもよく入る。学生の頃、大分の漁師さん宅へ泊まり込みで潜水調査をしていた折、その日の網に入ったムツのブツ切りの味噌汁を朝飯に頂いた。身も旨いし、良いダシがでる。 浅い海にいる本種の幼魚にも、深海魚の片鱗はある。深い海の底は暗いため、少しでも光を集める必要がある。そこで、深海に住む魚は概して眼が大きい。また深海の低水温に備えて、小さいうちから脂が乗っている。旨いわけだ。 写真=2012年8月7日、舞鶴市冠島宮前の水深9メートルにて撮影した体長10センチほどのムツ幼魚の群れ、ただし、一番上に写っているのはマアジ |
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