舞鶴市民新聞社の運営する舞鶴市近郊ローカルニュースサイト
      Web みなと舞鶴    http://www.maipress.co.jp
現在地は?
ホーム>>連載:水中散歩>>トゲモミジガイ
京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩154
−トゲモミジガイ− フグと同じ毒持ってます。











 トゲモミジガイは、若狭湾の砂地の海底でごく普通に見られるヒトデの一種である。遠目には綺麗な星形のヒトデだが、近くで見ると棘が上下に向かって生えており、踏んだら痛そうである(写真左)。これと良く似たモミジガイという種類のヒトデには、下向きの棘しか生えておらず、幾分フレンドリーな外見と言える。
 ヒトデといえば、海底でじっとしているイメージがあるかもしれないが、潜水中に出会うトゲモミジガイは意外に早足で、海底をすべるように動く。地面と接する側に細かい管状の足(管足と呼ぶ)が生えていて、これらを交互に動かすことにより、高速すり足が可能となっている。
 鋭い棘と高速すり足だけではまだ不安なようで、彼らは毒を蓄えることにより身を守る。それも、フグ毒と同じ、テテロドトキシンである。したがって、読者の皆さんがもし海辺でサバイバル生活を強いられた場合も、このヒトデは食事のメニューからはずした方が良いであろう。
 そんな完全防備に見えるトゲモミジガイにも、天敵はいる。カワハギはおちょぼ口でこのヒトデにかみついてはひっくり返し、弱点である口を攻める(写真右)。ヒトデそのものを食べるのか、胃の中の貝を狙っているのかは不明だが、棘にも毒にもくじけないカワハギのタフさには、真似したくはないけれど見習うべきものがある。
 由良川の河口、神崎海岸の沖あたりで学生実習の一環として網を曵くと、このヒトデがどっさり獲れることがある。真面目な学生さんなら、「一体何を食べてこんなに増え、それが誰の役に立っているのだろうか」と考え込んでしまうところだ。ヒトデは貝を食べるし、他の生物の死骸も食べる。そして、こんな彼らにも天敵はいる。何の役に立つのかさっぱりわからないものもひっくるめて、調べ、理解し、守ることが大切なのだと思う。
写真左=平常時のトゲモミジガイ(2014年12月26日、高浜町音海の水深4メートルで撮影)
写真右=カワハギにノックアウトされたトゲモミジガイ(2014年8月29日、宮津市島陰の水深2メートルで撮影)
サイトマップお問い合わせメールマガジンお申込み
当サイトに掲載されている情報・画像を、無断で転用・複製することを禁じます。
Copyright © maizurushiminshinbun all rights reserved.