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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩157
−チャガラ− 不憫な魚に居場所を

 チャガラはホンダワラ類の繁茂する本州の磯で普通に見られるハゼ科の魚である。成熟しても、女性の小指ほどの大きさにしかならない。薄いピンクの地肌を横切る山吹色のラインが印象的だ。よく似た模様の魚にキヌバリがおり、こちらは筆者の中指くらいの大きさで、くっきりとした黒い縞模様がある。
 夏場の若狭湾では、しばしばチャガラが群れをなす。少数の群れのこともあれば、藻場を一面覆うほどのチャガラの大群もまた、舞鶴沖の冠島ではよく見かける。冬季には群れを解体してなわばりを作り、春に繁殖し、寿命1年で死んでしまう。
 チャガラを単体で見ると風変わりな模様だが、藻場を背景とすれば合点が行く。山吹色の線はホンダワラの葉の色に近い。急所である目の周辺には、カモフラージュが特に念入りに施されている。では、鰭を縦走する青い線な何なのか? 負傷しても生死に関わらない箇所を目立たせて、攻撃をそこで受けてかわす、という作戦なのだろうか。また、敵にはそれほど目立たず、かつ同種の異性に見つけてもらいやすい模様として、進化してきたのかもしれない。
 チャガラという名前も風変わりだ。調べてみると、海に茶殻を播いたようだから、あるいは、鶏の餌とするために干した稚魚が茶殻のようだから、との説がある。いずれにせよ、不憫な扱いである。
 海藻に強く依存した魚であるため、海藻林が減るとチャガラも見かけなくなる。これと逆のことが起きているのが、今回の撮影地の音海である。高浜原発の稼働中は、温排水があるために海藻のほとんど生えない状態であったのが、原発が停まってからは年々海藻が繁茂し、チャガラやキヌバリ、メバルといった藻場の魚が増えてきた。鶏の餌にしかならないチャガラの声に耳を傾ければ、原発は再稼働して欲しくないところだろう。

写真=2015年4月16日、高浜町音海内浦湾の水深5メートルにて撮影したチャガラ。体長5センチほど
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