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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩158
−ムカデメリベ− 見た目から動きまで「へん」

 ムカデメリベはウミウシの一種である。早川いくお氏の『へんないきもの』という本ではこの生物、「便所すっぽんに春巻きをくっつけたような形態」と描写されている。
 ウミウシの類にはクラゲのポリプやカイメンなどをかじって摂餌する種類が多い中、ムカデメリベはエビや小魚を捕えて食べる。写真の個体は、巨大な口を広げて海底に向けており、餌をあさっているようだった。この口は開閉が可能であり、周囲に生えた触手を細かく波打たせている。口の上には、長い柄のついた眼も1対ある。写真の右手前にいるハゼの気持ちになると、怖くてたまらない。
 そもそもが、あまり頻繁に見られる種類の生物ではない。しかし、写真の個体を撮影した日に、「今日は随分と珍しいものに出会った」と喜んでいたら、その3日後にシュノーケリングしていて、おそらく別のムカデメリベを3個体見かけた。なぜこの初夏の舞鶴湾に多数のムカデメリベがいるのかは不明だ。本種の体色は薄い茶色であり、これは海藻への保護色と考えられる。今年は海藻が例年よりも良く繁茂しているため、捕食者の目につかずに生き残る個体が多かったのかもしれない。
 また,この生物はグレープフルーツのような香りを放つとの話をきいたことがあった.これも気になる話なので、3個体見た日にそっとつかまえて水面まで運び、マスクをはずして鼻を近づけてみた。ヒノキ花粉症の余韻をひく筆者の嗅覚ははなはだ心もとないが、それでも柑橘系というよりは、ホヤに似た匂いに思えた。
 メリベを水中に放つと、天地逆転した姿勢で春巻き様の突起を下に向けて並べ、体をくねらせながら泳ぎ去った。底なしに「へんないきもの」である。

写真=2015年5月1日、舞鶴市長浜の水深4メートル付近にいたムカデメリベ。図鑑には10センチに達すると記されていたが、写真の個体は35センチと巨大だった
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