マイワシは1980年代には我が国で獲れる魚の総量の4割近くを占めていたが、その後の十数年で漁獲量は100分の1ほどに激減した。本種の豊凶は気候変動と対応した自然現象とされているものの、資源量が減ってからも漁獲を続けたため回復は遅れた。
近縁のカタクチイワシ(別名タレクチ)は上顎よりも下顎が短いのに対し、マイワシは下顎が長く受け口である。また、マイワシは成長すると体の側面に星のような模様が7つばかり並んで現れる。サイズごとに名前の変わる出世魚で、小さい順に平子(ひらご)、小羽(こば)、大羽(おおば)イワシなどとして売られている。長距離を回遊する群と沿岸に定着する群がいて、後者は体型が寸胴となる。宮津の阿蘇海で獲れる金太郎イワシもその一例であろう。塩焼きにした腹身から金色の脂のにじむ姿が目に浮かぶ名だ。
マイワシは植物プランクトンや小型の動物プランクトンを餌とする。海の栄養分をほぼ直接食べて成長するようなもので、これが爆発的に増える原動力となる。一方、漢字で「鰯」と書かれる通り、鱗がはがれやすく弱い魚だ。小さいうちはクラゲなどに食べられ、成長してからも他の魚や海鳥たちの格好の餌となる。
しばらく姿を見なかったマイワシが、ここ2年ほどの間に少し増えてきた。特に今年の春には、京都府産のマイワシがよく店頭に並び、食卓をにぎわしてくれた。脂がのっていれば刺身やたたきが最高だが、ソテーにしてトマトソースをかけたパスタ、つみれやイワシハンバーグといった料理にも使える。中骨はトースターであぶって骨せんべいにすると旨い。
漁獲されるマイワシの大半は、養殖魚や家畜の餌、肥料等にされてきた。一昔前ほどの大漁は望めず、そのまま食べて十分おいしい魚なのだから、イワシはイワシとして頂くのが、海の資源に対してやさしく、道理にかなっている。
写真=舞鶴市長浜の水深3メートル付近で群れをなすマイワシ。体長8センチ前後であり,星の模様はまだ不明瞭である。2015年7月22日撮影
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