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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩17
−「クロダイ」−
我々は彼らにとっては敵か餌

クロダイは初夏に産卵する。夏の終わりの今頃は、海水浴場の波打ち際のごく浅いところで、2、3センチの稚魚をよく見かける。一方、産卵を済ませた親たちは、写真のように腹をすかせて、海の浅いところをうろうろしている。たいていの魚は小さいころには沢山が集まって群れを作り、大きくなるとやや少数の群れかまたは単独になる。ところがクロダイは、稚魚の頃は単独でおり、そして大きく成長したものが群れでいることが多いように思う。  マダイに較べてクロダイは、岸に近く浅いところに棲息する。強い紫外線から身を守るため、黒っぽい体色で武装しているのであろう。浅い海で黒光りする体躯は威風堂々としており、睥睨されれば「ごめんなさい」と訳もなく謝ってしまいそうだ。  写真のクロダイは伊根で撮影したものだが、舞鶴湾内でも,由良川河口でも、潜っていてふと周囲に威圧感を感じると、大きなクロダイ数匹にぐるりと囲まれることがよくある。海の中で魚が近づいてきたとき、「友達だと思ってくれているんだ」などと思ってはいけない。よほど魚に似てる人ならいざ知らず、海の中に足を踏み入れる我々は彼らにとって、敵か、餌かのどちらかだろう。銛も持たず、素潜りで小さな水中カメラ片手にちゃぷちゃぷやっている筆者など、徒党を組んだクロダイからすれば、海に落ちた大きな餌くらいに見えているのかもしれない。そう考えるとなおさら、「簡単に溺れてなるものか」とも思い、生への渇望を実感する。自然とのやりとりで時折感じるこうした緊張感もまた、海に潜る醍醐味の一つだ。  追伸 来る9月7日、東舞鶴のしおじプラザで開催される「ふるさと海づくり大会」において、京都大学水産実験所として生きた魚を展示することになりました。若狭湾で出遭った様々な光景を再現した水槽を鋭意企画中。ひやかし歓迎。
写真=体長45センチのクロダイ。撮影地は伊根町カルビ浜、水深2メートル
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