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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩2
−「メバル稚魚の群れ」−
目隠ししても巣に戻る

 メバルには巣があるらしい。京都大学の大学院生の三田村君の研究によると、舞鶴湾の長浜で採集して発信器をつけてから1キロ離れたところで放流すると、メバルはちゃんと元住んでいたところに帰ってくるという。さながら出来の良い犬のようだ。驚いたことに、プラスチックのカバーで目隠しをしても帰ってくる。ある意味、犬よりもすぐれているかもしれない。  昨年の春、その三田村君に頼まれて舞鶴湾内の長浜から1キロ東で潜った。「発信器をつけた魚を9匹放したら、5匹は元の場所に戻ったんですけど、残りの4匹は放流した場所から動きません。ひょっとしてそこで死んでるかもしれないから、拾ってきて下さい」との依頼だった。  当日は透明度が50センチくらいしかなくて、しかもクラゲがたくさんいてかなり苦労したが、3匹は確かに死んで海底に落ちているのを確認した。ウェットスーツを着ていても、口のまわりをクラゲに刺されてしまい、潜水後しばらくは激辛系ラーメンを食べたあとのような感覚がくちびるに残った。とはいえ、1個5万円の発信器を3個回収でき、しかも「動いた固体はみな巣に戻った」という傍証も得られたわけだからよかった。  春から夏にかけて、メバルの稚魚たちは海藻の合間に群れを作って漂い、流れてくる動物プランクトンを片っ端からぱくつく。そしてもう少し大きくなると海底へ移動し、岩陰などに巣をするようになるのだろう。いずれにせよ、メバルたちが生きてゆくには海藻の繁る岩場が不可欠である。人間様のご都合でやたらと海の中をいじくりまわされれば、メバルたちは途方に暮れるにちがいない。
写真= 海藻に集まる体長3センチの稚魚の群れ。撮影地は宮津市越浜、水深2メートル
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