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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩20
−「エチゼンクラゲ」−
1年で直径1メートルにまで成長

エチゼンクラゲが新種として初めて報告されたのは1920年のことである。沿岸のミズクラゲがおそらく有史以来人類に認知され、かの「枕草子」にも登場するのに対し、エチゼンクラゲはもともと人類との接点の少ない珍しい種類であった。その本種が1958年、95年に大発生し、2000年以降は毎年のように大挙して現れては漁師さんたちを困らせている。定置網に入ったら重くて揚がらないし、クラゲに刺された魚は体温が上がって痛みやすいから、すぐに氷で冷やさないといけない。なんだか漁師さんにも魚にも同情してしまう。  エチゼンクラゲは中国の揚子江河口付近で生まれ、対馬暖流に乗って日本海へやってくると考えられている。ミズクラゲが内湾で一生を終えるのとは対照的だ。我が国沿岸の開発が進むにつれてミズクラゲの大増殖が問題となったように、エチゼンクラゲの大発生も中国の沿岸域の工業化と関連があるのではとの指摘もある。  生まれたときは1ミリに満たないものが、1年以内で直径1メートルにまで成長するというからすごい。その間、動物プランクトンや小さな魚等を大量に食べているのだろう。魚たちの餌をうばい、そして魚を食うとしたら、海の資源に与える影響はますます深刻だ。弱ったクラゲはしばしば、魚にかじられている。特にカワハギの類はクラゲを好んで食べるようで、この写真を撮ったときも、近くで残骸となったクラゲをむさぼり食うカワハギはまるまると太っていた。  エチゼンクラゲを利用する方法については模索されており、食用に加工する技術も開発されている。でも今のところ加工のコストが高く、よほど皆でがんばって食べないとクラゲはなくなりそうにはない。クラゲの大発生が人為的な理由によるとしたら、早急に因果関係を解明し、対策を講じる必要がある。
写真=越前町長須浜の水深2メートルで撮影した直径約1メートルのエチゼンクラゲ
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