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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩22
−「シマハゼ」−
いつ潜っても出迎えてくれる

舞鶴湾の長浜で毎月2回の定例潜水を始めてから、今年で3年目を迎えた。毎回極力同じコースをたどってみても、出遭う魚の種類はさまざまだ。同じ魚でも発育段階や、そして行動パターンときたら無数にあり、記録をとっていても飽きない。魚の種類数は、夏の高水温期には30種類近くになり、冬の低水温期には10種類以下となる。この2年間、潜れば必ず見られた皆勤賞の魚たちがいくつかいて、その代表格が写真のアカオビシマハゼである。いつ潜っても出迎えてくれるこのハゼたちがもしもどこかに消えたら、いよいよ舞鶴湾も危機,ということになろうか。  さて、今日のシマハゼ君はいつもと違い、何やら大きな獲物をくわえている。なんと、自分とあまり変わりない大きさのカタクチイワシの上半身(というのだろうか)を頬ばっているではないか。こんな場面に遭遇すると、「海底に這いつくばるばかりのこのハゼが、いったいどんな瞬発力を発揮してこのごちそうを仕留めたのだろうか」と想像を膨らまさざるを得ない。しかしハゼの隠れた能力に過大な期待をする前に、海の上の方を泳ぐカタクチイワシの群れに目を向けてみよう。セイゴ(スズキの若魚)にでも襲われるのだろうか、傷ついたり弱ったりした魚が少なからずいるのにも気づく。そんな群れからの脱落者が底に落ち、そしてシマハゼ君がこの日、千載一遇のチャンスをものにしたのだろう。そう思うと、このポーカーフェイスのハゼの目に、自力で仕事をなしとげた者というよりは、棚ボタを喜ぶ者の表情を読みとりたくなる。  プランクトンを集めて成長するカタクチイワシ。それを食うスズキやブリが我々の食卓を彩ることもあれば、そのおこぼれがハゼに回ることもある。海の中でのちょっとした寸劇に、自然界での物質循環の健全な姿を垣間見た気がした。
写真=季節偶来者であるカタクチイワシをくわえる定住者のアカオビシマハゼ。舞鶴湾長浜の水深4メートルで撮影
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