12月下旬から4月上旬までの低水温期には、ドライスーツを着て海に潜っている。水が入ってこないため暖かい反面、装備が大変重く、また水との一体感がないのが難点だ。厳冬の舞鶴湾でも、ウェットスーツで潜っている人たちがいる。ナマコの潜水漁をする漁師さんたちだ。飲み屋のお通しで出てくるナマコの酢の物は、地元の漁師さんたちが運んでくれるものだ。
マナマコは、最も普通に食用とされるナマコで、色彩の青いものと赤いものとがある。写真は内湾に多い青ナマコと呼ばれるタイプだ。海底にごろりんところがって泥を食べ、そして泥の糞をする。正確には、泥の中の有機物をこしとって、分解しているのだ。だから、そのままではヘドロになるばかりの海の汚れを海の恵みへと変えてくれる、まことに重宝な生き物である。
「ナマコは何の仲間でしょうか?」と問われて正確に答えられる人は少ない。味からすると貝の仲間かと思い、また形からするとカマボコの仲間だと勘違いしていた人もいるかもしれない。姿格好からは想像しにくいが、ナマコはウニやヒトデと同じ棘皮(きょくひ)動物に含まれる。ナマコの内臓を塩辛にした珍味コノワタを食べると、なるほど、ウニの仲間のようだな、と納得できる。
1970〜80年代に舞鶴湾で大漁に採れていたナマコは、80年代後半以降、激減している。京大大学院生の稲生陽君の修士論文「舞鶴湾の遡及的研究」によれば、1980年頃までは陸上から舞鶴湾へ有機物が大量に流れ込み、これがナマコの餌になっていた。ところが80年代後半以降下水処理施設が整備されると、海は一見きれいになっても、ナマコにとってはありがたくない環境になったのだろう、とのことだ。ともあれ、我々が地上でのうのうと暮らしている間も、海の底を黙々と掃除しているナマコ君に、あらためて感謝のエールを送りたい。
写真=長浜の水深5メートルで撮影されたマナマコ。写真左下の口で泥を吸い込んでいる
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