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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩26
−「イワガキ」− 素人目にはただの岩

 水中にいるイワガキは、素人目にはただの岩だ。周囲に不穏な動きがあればすばやく殻を閉ざし、安全とみればわずかに開いて餌のプランクトンをこしとって食べている。イワガキに限らず、カキの名産地は大河の近くに多い。これは、川が運んでくる栄養分がカキの成長に欠かせないから、だそうだ。山から川を経て海に運ばれた栄養分は、植物プランクトンをはぐくみ、これらを餌にカキも成長する。舞鶴産のイワガキも、由良川の恩恵を受けてふっくらと育つのだろう。  欧米では、カキはいわゆる元気の素として親しまれている。グリコーゲンを豊富に含むからだ。魚介類をあまり生食しないスコットランドあたりでも、「オイスターバー」とよばれるパブでは、生のカキにレモンやケチャップを添えたものを出してくれて、これがまた濃い味のビールや辛口の白ワインに良く合う。ヨーロッパでは、デートの前にカキを食べて勢いをつける、という良き習慣があるそうだ。筆者の英国留学中には、残念ながらそんな風習に加わる機会はなかったが。  さて,海の生産力の源が森であると確信し、植樹活動をしている漁師さんたちがいる。中でも宮城県のカキ養殖業者である畠山重篤さんの活動は特に有名で、「森は海の恋人」「日本汽水紀行」等の名著がある。  森と海のつながりについては、漁師の間で経験的には知られているものの、科学的根拠は明らかではない。森と海がどう連環し、そこに人がどう関わってゆくべきなのか。そんなテーマの企画展示が、6月2日から京大総合博物館で開催される。同企画展と連動して、7月17日にはC.W.ニコル氏が、同24日には上記の畠山氏が講演してくれることになっている。そんな企画の裏方仕事やら、講義の準備やらで筆者も最近はにわかに忙しく、朝起きると目の下に隅がある日々を送っている。いかん、イワガキでも食って精をつけねば。
写真=瀬崎の水深1メートルで見つけたイワガキ。写真の左から右下にかけて殻がわずかに開く。後ろに見えるのはウニ
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