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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩29
−「アワビ」− 海藻食べ、うまみをじっくり蓄える

 アワビは、平べったいけれど巻き貝の仲間だ。写真の右端の白い部分が巻き始めで、そこから時計回りに成長してきている。殻には呼吸のための穴が4〜5個あって、成長するにともない古い穴は閉じ、新しい穴が形成される。昼間は岩の裏側にへばりついていて、夜になると表へ出てきて海藻を食べる。そして夜明け前にはもとの場所に戻るのが普通だ。大きなアワビでは、周囲の岩がほどよく削れて、岩にぴったりと収まっていることもある。また殻に付着する生物のおかげもあって、巧みにカモフラージュしている場合が多い。  殻に付着する生物には、海藻やイソギンチャク、海綿、ゴカイ、そして二枚貝などがいる。二枚貝の中には、アワビの殻を浸食して穴を開けてしまうものもある。アワビとしてもいたずらに穴を開けられるわけにはいかず、内側から目張りをしていく。そこで、大きなアワビの内側を見ると、殻の一部がざらざらとしていることがよくある。  アワビ稚貝の放流は全国で行われており、京都府でも毎年多数が放流されている。放流アワビは府の栽培漁業センターなどで生産され、各漁協が放流し、放流後の管理も行っている。放流サイズになるまでに1年半、漁獲できるサイズになるまでにそれからさらに3年ほどかかるそうなので、アワビが高価なのもうなずける。放流されたアワビには、殻のうずまきの頂点の部分が緑色をしている場合が多い。これは、種苗生産施設で与えられる餌に緑色の色素が多いからである。  寿司ネタや刺身として高価なアワビであるが、干したものはさらに高価になる場合もあり、中華料理の超高級食材だ。また、仰向けにしたアワビを金網の上で焼く残酷焼きは、高級料亭でおっちゃん連中がニヤニヤしながら愉しむタイプの料理のように思える。いずれにせよ美味な貝であり、そのうまみのもとは、彼らが食べるコンブなどの海藻のうまみをじっくりと蓄えたものだと思う。海藻の生える岩場がなくなれば、アワビも消えてしまうことを心に留めておきたい。
写真=瀬崎の水深4メートルで撮影したアワビ
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