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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩32
−「カワハギ」− 本物には劣る・○○のヨン様

 カワハギは、筆者が行きつけのスーパーでは「丸ハギ」として売られ、高浜の某店では「いとまきこぐり」なる名前がついている。いずれにせよ庶民的な値段で購入できてうれしい。たいがいの鮮魚料理の本に「トラフグにも劣らぬ味」と書かれているのを見て、「確かにそうだ」と、トラフグを食べたことのない筆者は無責任にうなずく。フグの味は知らなくとも、カワハギの薄造りにキモをあえてネギをちらしたキモたたきが絶妙に酒にも飯にも合うのはよく知っている。  大体が不用心な魚だ。海の中で貝を割ってみると、最初にやってくるのがベラか、このカワハギだ.ヘタをすると、手づかみで捕まえられることもある。カワハギの体は表面が厚い皮で覆われているため、あまり捕食されないから、警戒心が弱いのだろう。ただし、カワハギが餌を食べるときには丸飲みせず、ついばむように食べるので、餌で釣るのは難しいそうだ。  カワハギがクラゲをつついているところによく出くわす。先日はさらに,ヒトデをむさぼり食っているところも見た。クラゲもヒトデも毒なのに、彼らは平気なのだろうか。そこらに貝でもフジツボでも、もうちょっとうまそうなものもあるのに、あえてクラゲやヒトデを食う奴ら。そんなカワハギを見ていて、あらぬ想像が首をもたげる。「フグにも劣らぬ」と称される時点で既に、カワハギはフグに負けている。例えて言えば、「○○のヨン様」くらいのものだ。  フグは毒を持ち、なおかつ美味だからこそ抜群の知名度と高級感がある。カワハギもまた、毒のある餌を食べて、いつかフグのように毒を持ち、そして高級魚の一員になろう、素人にさばかれるのではなくて、自分をさばくのに免許がいるような魚になりたい。そんな野心を心に秘めているのではないか? と、無心にヒトデをむさぼるカワハギを見つめ、水深8メートルで想像力がかけめぐるのであった。
写真=越前町長須浜沖水深8メートルのカワハギ。体長12センチ。エチゼンクラゲを飽食して、腹がふくれている
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