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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩33
−「トリガイ」− 鳥の頭にそっくり!

 寿司ネタとして知られるトリガイは、全国的にも丹後あるいは舞鶴の名産ということになっている。これは、舞鶴湾や宮津湾が以前からトリガイの良好な漁場であったことに加えて、京都府立海洋センターが全国に先がけてトリガイの養殖技術の開発に成功したことに負うところが大きい。なるべく大きいトリガイをかけ合わせるなどの品種改良を続けて生まれた新品種は「きょうトリガイ」と命名されている。養殖とはいっても、人工孵化した稚貝を外敵から守るためにカゴに入れて海中につり下げ、餌は天然のプランクトンを食べさせるわけだから、自然にやさしく、味もよい.初夏に生まれて、一年で収穫されるため、旬は夏である。  天然のトリガイは、熊手の親分のうしろにタモ網をぶらさげたような「ケタ網」と呼ばれる漁具で海底の泥をすくって採る。そこらじゅうでこのケタ網を曳きまわせば、居合わせたカレイの稚魚やハゼなどの魚としては随分と迷惑なことになろう。天然トリガイの不足分を養殖で補えれば、こうした点でもトリガイ養殖は理にかなっているといえよう。  舞鶴湾で出会うトリガイは、たいてい写真のように体の一部を水中に出し、他の部分は泥の中に埋もれている。天敵は、タコやヒトデだろう。海が汚れて海底の酸素が足りなくなると、いかにも逃げ足の遅そうなこれら貝類にはたまったものではない。タコよりもケタ網よりも怖い低酸素、ということになろうか。もっとも、危険がせまるとトリガイはぴょんと飛び跳ねるともいう。  食用にされるのはトリガイの足にあたる部分で、貝を開けてこの部分を取り出すと、鳥の頭にそっくりだ。また、開いて寿司種にしたときも、鳥のくちばしに似ており、さらに食感が鶏肉っぽくもあるため、トリガイと呼ぶのだそうだ。そんなわけで、いささか強引だが、とり年の2005年もどうぞよろしく。
写真=長浜、水深7メートルの海底に半分ほど埋まっているトリガイ
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