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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩40
−「サザエ」− 巧みな自然の造形美

 お盆が近づくと、市外へ勤めに出ている人や、大学に通う人たちが戻ってくるため、舞鶴の人口は倍くらいに膨れ上がる。帰郷した人たちは、地元の海で遊び、そして夜はこれまた地元の居酒屋さんで、舞鶴産のサザエの壺焼きなどを食べたりするのだろう。とても良い習慣だと思う。  サザエは海藻の生える岩場によくいる。バーベキューの網の上で焼かれるときはフタを閉ざしているが、海の中ではフタを開け、身の部分を吸盤のように使って岩に張り付いている。昼間は岩盤の隙間や大きな岩の下などに隠れていることが多く、夜になると海藻をよじ登って、海藻の葉をむしゃむしゃと食う。  写真のサザエは冠島で撮影したものだ。珍しいことに、昼日中に大きな岩の上を猛スピードで(もちろんサザエのレベルでだが)突進していた。岩の上で餌を食べていたら、陽が差してきたし、ダイバーの気配も感じるし、岩の下に逃げよう、というところだろう。写真の下に向かって逃げており、でんでん虫のような触角が左下に向いて飛び出ている。  サザエには、殻にトゲのあるものとないものとがいる。波の穏やかなところのサザエにはトゲがなく、波の荒い岩場のサザエはごろごろ転がらないようにトゲが生えるのだそうだ。バーベキューで焼くときには、トゲのあるサザエの方が網の上でころがらなくて焼きやすいと思う。  京都市内の高校生からの質問で、「サザエはどうやって成長するんですか」というのがあった。サザエに限らず巻き貝は、貝の巻く方向に沿って、殻の炭酸カルシウムを沈着させて成長してゆく。殻のてっぺんの部分はそれゆえ、小さい時の殻をそのまま利用していることになる。巧みな自然の造形美ではないか。  壺焼きにしたサザエのしっぽの暗緑色の部分は、好んで食べる人もいれば、残す人もいる。筆者は言うまでもなく前者だ。苦みが強いので、大人の味だと思う。「子供の頃は残したけれど、学生生活を終えて帰省した頃から食べるようになった」なんて人も多いのだろう。
写真=冠島東側の鳥居前、水深7メートル付近で撮影したサザエ。殻の高さは8センチ程度
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