ヒラメは、どう猛な魚である。もっぱらアミ類(小さなエビの仲間)を餌にしている5センチほどの稚魚でさえ、水槽で観察していると、コブラのように頭をもたげては餌に食いつく様子に捕食者の片鱗がうかがえる。10センチを越えた頃からは、他の魚を好んで食べるようになる。特に大物のヒラメを釣るには、生きたカタクチイワシに針をつけて泳がせるのが良いそうだ。砂にもぐって色を変えるのが上手な魚であるが、大きくなると写真のように岩の上にでんと構えて、餌の小魚が通りがかるのを待つことも多い。
ヒラメもカレイも、生まれたときには両側に眼がある。ヒラメの場合、体長1センチを越えた頃から、右眼が頭の上を通過して左側へと移動し、もと左側だった方を上にして暮らすようになる。カレイの類ではその逆で、左眼が右側へと移動する。いわゆる、「左ヒラメに右カレイ」と言い習わされる由縁だ。舞鶴の魚屋さんで魚を選ぶかぎりでは、この知識で問題ない。ところがどんな規則にも例外があるもので、カレイの仲間にも眼が左側へ移動する種類がいるし、さらにヒラメに近縁のヨーロッパやアメリカの魚では、眼が右側へ移動する種類もいるそうだ。そもそもヒラメやカレイの仲間は、眼が移動するだけではなく、頭の骨がねじれて脳が背骨からずれた位置にくるという、脊椎動物の中では大変特異な形をしている。だから、魚類学者はヒラメとカレイの類をまとめて異体類と呼んでいる。
そんな風変わりな異体類に関する国際学会が、10月20日から東舞鶴のベイプラザで開催される。会期中の同23日には市民公開講演会もあり、その中でもアメリカからの招待講演者であるジョン・バーク先生の講演の同時通訳を筆者がお引き受けすることとなった。ウィットに富んだバーク先生のしゃべりを訳し切れるかどうか不安はあるが、興味のある方はご参集頂きたい。
写真=冠島南端の水深7メートルで撮影したヒラメ。体長は60センチほど
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