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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩45
−「アサヒアナハゼ」− 立派な生殖突起を持った雄

 アサヒアナハゼは、若狭湾でもっとも普通に見られるアナハゼの仲間だ。アナハゼといっても、ハゼよりはカサゴに近い種類の魚である。口は大きく開き、通りがかりの小魚を見境なく食べる。調査でアサヒアナハゼがとれたとき、バケツの中で他の魚といっしょに入れておくと、貴重なサンプルの小魚がみんな食べられてしまうのであわてる。  舞鶴湾内では、2センチほどのアサヒアナハゼの稚魚が毎年4月に見られ、季節を追って成長してゆく。そして年末頃には、立派な生殖突起を持った雄をしばしば見かける。アナハゼの仲間は、交尾をする魚として知られている。だから雄は立派な生殖突起を持つわけだ。実験所の周辺でも繁殖行動をしているのだろうが、筆者がアナハゼの交尾を見たのは、学生時代に静岡で潜っていたときくらいだ。  以前、アナハゼに関連してテレビの取材を受けたことがある。依頼者が探偵役のタレントとともに謎解きをするという人気番組で、筆者は「助言者」として指名され,実験所の前でシュノーケリングをしてアナハゼをさがした。ちなみに依頼者のリクエストは、「『ち○ぽだし』と呼ばれる魚を見つけて下さい」というものだった。  最近、とある研究者から、「舞鶴周辺でアサヒアナハゼを採集できる場所はありませんか」という相談を受けた。「依頼者」であるその研究者は、環境ホルモンがこの魚の生殖突起の大きさに影響してくるのではないかとの仮説を立てて、各地でアサヒアナハゼを採集しているのだそうだ。環境ホルモンにより、川のコイが雌化しているという話は聞いたことがあるが、我らが長浜の主、アサヒアナハゼの一物にも影響していたりするのだろうか。かくして、深夜のバラエティー番組みたいなことを、またしてもやることになりそうだ。
写真=長浜の水深8メートル、スギ間伐材魚礁の上で休むアサヒアナハゼ。体長9センチほどの雄で、しりびれの前に立派な生殖突起のあるのがわかる
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