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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩46
−「スジハゼ」− エビと助け合い「共生」

 長浜で毎月2回の定例潜水を始めてから、昨年の12月までで4年が経過した。通算96回の潜水観察の記録を集計していて、気づいたことがある。舞鶴湾長浜の魚は、種類も数も、夏に多くて冬に少ないという規則性が見事に繰り返されているが、魚の種類ごとに見てみると、年によってマダイが多い年もあれば、キジハタが多い年もある。いろんな種類の魚がいることによって、全体としての調和は保たれつつ、季節変化が繰り返されているのだ。  そうした中でも、ほぼ毎回見られた魚に、メバル、シマハゼ、そしてこのスジハゼがいる。スジハゼはこの4年間、数が増えるでも減るでもなく、いつ潜っても、だいたい海底に鎮座している。彼らの棲む場所は、泥っぽい海底で、しかも写真のように巣穴の入り口を定位置としている場合が多い。  巣穴はスジハゼが自分で掘ったものではなく、テッポウエビという小さなエビに掘らせたものだ。ハゼの背後の穴の奥では、いまでもエビがせっせと泥を掘る。ではスジハゼは何をしているかというと、危険が来たらエビに知らせるのだ。エビは穴を掘り、泥の中の小さな生き物を食べる。ハゼはそのおこぼれを頂戴し、流れてきた餌をついばんだりもし、そして物騒な生き物(たとえばダイバー)が近づけばエビに知らせ、いよいよ危険とみると、自分も穴に隠れる。このように、異なる種類の生物が、お互いに助け合って生きていく習性を、生物学の用語では共生という。  ところで、最近読んだ松田裕之先生の本によれば、人類が「自然と共生する社会を目指そう」という考えは日本独特のもので、正しくは「持続的な寄生」とでも言うべきであろう、とのこと。生物学の用語として、厳密にはそうなのだけれど、ハゼたちと身近に接し、彼らを生かしつつ自分も生きたいと想うにつれ、そんな願いにはやはり「共生」という言葉がぴったりくる気もする。
写真=舞鶴市長浜の水深4メートルにいつ潜ってもいるスジハゼ
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