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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩47
−「キクメイシモドキ」− 南からのサンゴの運命は

 「今年の冬は寒い」と誰もが口にする。でも海の中は、そうでもない。たしかに表面は雪どけ水の影響で0度近くまで冷えることもある。しかし、真水の入った冷たい水は海水よりも軽いため、海の上に乗るような形になる。その結果、この冬の舞鶴湾内では、5メートルほど潜れば水温は12度くらいある、いわば,風呂の湯の逆のような状態が維持されている。  そんなこの冬の舞鶴湾で、なんとサンゴが見つかった。キクメイシモドキといって、サンゴ礁を形成する造礁サンゴの1種だ。亜熱帯にいるようなサンゴがどうして舞鶴湾で見つかるかといえば、やはり海全体としては(というか地球全体としては)温暖化が進行しているからであろう。海が暖かい年に日本海側では雪が降りやすいことは、天気予報の世界ではよく知られたことだ。  サンゴは、クラゲやイソギンチャクと同じく刺胞動物に属する。写真のキクメイシモドキも、クラゲのようなプランクトンの時期に暖流に運ばれて、舞鶴湾の海底に落ち着いたのだろう。よく見れば、イソギンチャクが寄り集まったようでもある=写真左。  造礁サンゴの大きな特徴として、藻類を体の中に共生させ、石灰質の骨格(いわゆるサンゴ礁)を形成するということがある=写真右。サンゴは、海水中の二酸化炭素から、炭酸カルシウムの骨をどんどん作っていくわけだから、地球上の増えすぎた二酸化炭素を減らす働きをしてくれるはずだ。温暖化が進んでサンゴの分布が増え、結果として二酸化炭素を減らしてくれるとしたら、バランス的には都合が良い。一方で、サンゴが育つと海藻が生えにくくなるという問題もある。海藻がなくなれば、そこに憩う魚たちも減るだろう。南からの珍客がいかなる運命をたどるのか、当面は見守ってゆくしかないだろう。
写真=長浜の水深4メートルで発見されたキクメイシモドキ。直径約5センチ。普段はビロビロした触手で餌を集め(写真左)、驚くと触手はひっこむため、菊の花に似た骨格が露出する(写真右)
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