ミズクラゲはときに大発生し漁師さんに嫌われる。網にかかったら重くて揚げられなくなるからだ。しかし、海のしくみを全体として理解する上では、嫌われ者の生き物についても研究しておかなければならない。
クラゲが大発生する原因については諸説ある。クラゲの幼生には、ポリプといって壁にへばりついて生活する時期がある。その付着対象として、天然の岩や海藻よりもコンクリート護岸の方が都合がよいから、護岸が進むとクラゲが増えるとされる。また、海が汚れてプランクトンが増えると、それを餌にするクラゲが増えるとか。さらには、発電所の温排水から爆発的な増殖が始まる、等々。いずれにせよ、人間の営みがまわりまわって人間に返ってくるわけだ。
ミズクラゲは人間が刺されて痛いような毒は持っていない。小型のものは、小浜名物くずまんじゅうに似て見えなくもない。がしかし、ミズクラゲをそのまま食べると大変なことになるらしい。我が水産実験所の中村良成さんという勇気ある先輩が同窓会誌に寄稿されたところによれば、ミズクラゲを寒天だと思って食べると、喉のあたりに強烈なかゆみを感じ、嘔吐が止まらなくなる、のだそうだ。
役に立たないミズクラゲでも、日々観察しているとなんとなく愛着も湧いてくる。潜水中に、ミズクラゲが猛毒を持つアカクラゲに捕まって食べられている光景に遭遇すると、ついミズクラゲを救出してみたくもなる。そんな日の晩はミズクラゲが美しい女性に姿を変えて恩返しに来たり、なんてことは、決してないんだなあ、これが。
写真=ミズクラゲ。撮影場所は小浜の先の宇久という漁港周辺、水深3メートル
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