ホンベラは、若狭湾沿岸で海藻の生えた浅いところに、ごく普通にいるベラだ。初夏の頃、釣りをしていて、こんなベラばかり釣れると、釣り人はちょっとがっかりするのだろう。煮付けや唐揚げで食べられるが、あまり大きな魚ではないし、身には磯臭さがある。
若狭湾にはこのホンベラのほか、ササノハベラ、キュウセンなどの種類のベラがいる。ベラの仲間はどれも口が小さく、胸びれをぴゅんぴゅん動かしながら泳ぐ。浅い岩場で潜っていて、岩をひっくり返したり、海藻をわさわさしたりすると、どこからともなく集まってくるのが、このホンベラだ。石をかちかちと鳴らすだけでも寄ってくる。
ホンベラは普段は海藻や岩についた小さな虫を食べている。小さな口は、海藻の表面の生物をつつくのに適しているのだろう。試しにウニを水中で割ってみると、「こんなごちそう、本当に食べていいのかな」と相談している風なのが、写真のベラたちだ。でも結局みんなでむしゃむしゃ食べてくれる。ホンベラ同士は結構仲良く食事をするのだが、ここに一回り大きいササノハベラが現れると、ホンベラを追い払って餌を独占しようとする。ベラの世界も、ラクではない。
以前、昼と夜を潜り較べていたとき、日没以降はベラの類をまったく見かけないことに気づいた。ベラ類は、鳥目らしい。眼が小さく、光を集めにくいから、ちょっと薄暗いともう目が見えなくなってしまうのだろう。だから夜は早々と寝てしまう。そのかわり、昼間に餌があれば、かなり不用心に食いつく。そんなわけで、今の時期、昼日中に磯で釣りをしていたら、ベラが釣れてしまうのも無理はない。観念して、唐揚げ甘酢あんかけにでもして食べてあげよう。
写真=水中で割ったウニの周囲に集まる、体長約12センチのホンベラ。高浜町城山公園前の水深3メートルにて
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