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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩52
−「ササウシノシタ」− 眼が体の中を通って移動

 ササウシノシタはシタビラメの一種だ。夏の若狭湾の海水浴場で、水中マスクをかけたまま、膝ぐらいの深さのところにはいつくばっていると、簡単に見つけることができる。上手に隠れている反面、逃げ足は遅く、時には手づかみでもつかまえられる。  眼が寄っているだけあって、ヒラメやカレイと同じ異体類というグループであり、生まれて間もない頃は眼が両側についているのに、ある時期から、眼が右側へ移動する。昨年の秋に舞鶴で開かれた異体類の国際シンポジウムで、福井県立大の青海忠久先生が発表されていたところによると、ヒラメやカレイでは普通、眼は顔の表面を通って移動するのに、ササウシノシタでは眼が体の中を通って移動するのだそうだ。人間に置き換えて想像すると、いずれにせよ相当に不気味である。  舞鶴市内のスーパーでシタビラメとして売られている魚には、もう少し深い所に棲んでいるクロウシノシタなどが多い。たいてい安いので、つい買ってしまう。シタビラメのムニエルといえば、こぎれいなフランス料理店の定番料理である。でも、ナイフとフォークの扱いに慣れていないと案外食べにくく、気取って注文すると後悔することになるかもしれない。ご家庭であれば、塩コショウしたシタビラメにパセリとパン粉と粉チーズとオリーブオイルを散らしてオーブンで焼けば、縁側の小骨もおいしく食べられて、大変具合が良い。  スーパーではまた、夏場に「大阪産」と書かれたシタビラメがよく売られている。大阪湾の北部の海底には、夏場に酸素の足りない海域が形成されるため、シタビラメは北から南へ追いやられる。酸素の足りない海域と足りている海域の境界付近には、シタビラメがたまるから、簡単に漁獲されるのだそうだ。そんな様子を想い描くと、なんとなく大阪のシタビラメが不憫である。
写真=砂浜にうまく隠れるササウシノシタ。宮津市島陰の水深1メートルにて
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