カマスの群れを見ると、「秋だな」と思う。水産実験所の前の海には、毎年8月から10月にかけて、カマスの群れが現れる。あまり物怖じしない魚で、潜水している筆者のまわりをぐるぐると回り始めることもある。
夏はダイビングのガイド、冬は漁師をしているという西舞鶴の大西さんによれば、「カマスは、冠島周辺にたくさんいる年には舞鶴湾内に少なく、冠島で少ない年には湾内に多い」のだそうだ。それを聞いて、毎月2回行っている定例潜水観察のデータを調べてみたところ、過去5年間で2003年の秋だけは、舞鶴湾内でまったくカマスを見ていない。カマスの群れが湾の中に入る年と入らない年があるということなのだろうか。
もう1つ不思議なのは、食べ頃のカマスの群れはよく見るが、小さいカマスの群れに出会ったためしがない、ということだ。カマスの稚魚は一体どこにいるのだろうか。学生時代にお世話になった大分県の漁師さんは、「春のカマスは最高にうまい」と言っていた。成熟したカマスは、暖かい海へ行って産卵し、稚魚が北上してくるということなのかもしれない。
筆者がよく行く西舞鶴の某スーパーでも、カマスは秋によく並ぶ。9月には12尾入りが150円という理不尽な安さで売られていたこともあったが、10月には2尾で298円というまっとうな値段に落ち着いた。いずれにせよ、ルアーに食いつくカマスのように、飛びついて買ってしまう。鱗や内蔵をとったあと、「カマスの名前の由来はやっぱり、『咬ます』?」なんてシャレて口に指を入れたりしたら、鋭い歯が刺さって血まみれになるので注意しよう。塩焼きにしたときの、淡白にしてしっとりとした身は大人の味わいだ。身がくずれやすいので、魚焼きの網にはサラダ油を塗ってから焼くとよい。北海道産のサンマを食べ飽きたこの時季、舞鶴産カマスの塩焼きをお試しあれ。
写真=アカカマスの群れ。舞鶴市長浜の水深3メートルにて
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