いきなり食べる話で恐縮だが、先日初めてイタヤガイという貝を頂く機会があった。本紙で「ぼんぼや〜じ瓦版」を不定期連載されている竹内シェフの経営する、舞鶴市内の某フランス料理店においてである。地元の食材への徹底したこだわりに心打たれ、また見たことも聞いたこともないようなおいしい料理に感嘆させられる中、ひときわ惹かれたのが、舞鶴産のイタヤガイをパイ皮で包み焼きにしたものだった。
イタヤガイという貝の存在は、子供の頃から知っていた。ふつう二枚貝は2枚の殻がほぼ同じ形なのに、この貝では平らな殻とふっくらした殻とがセットになっている。「ふくらんだ側の殻は、しゃもじに使うこともあります」と子供の頃に読んだ図鑑には書かれていた。ちなみに名前の由来は、平らな殻が板ぶき屋根に似ているからだそうだ。
舞鶴湾で潜るようになり、生きたイタヤガイにも何度か遭遇した。多くの場合、平らな側を上にして海底に埋まっている。わずかに口を開いているのは、流れてくるプランクトンを食べているのだろう。体の大部分が埋まっていれば、海底をはうようにして餌をさがすヒトデやエイなどの天敵にも食べられにくいはずだ。
イタヤガイはホタテガイの仲間だ。ホタテガイは北海道やアラスカで放流や養殖が成功し、以前よりも随分安く買えるようになった。それはそれでありがたいことだ。でも、遠くの産地から輸送するには、多くの石油エネルギーを消費するだろう。それよりは、地元で獲れる食材を有効に使う方が、長い目で見て地球に優しい。地産地消の心がけは、我が国が、そして世界が抱える様々な問題に対する、もっとも有効な解決策だと個人的には思っている。そんな意味でも、竹内さんのお仕事には拍手を送りたい。
写真=舞鶴市長浜の水深7メートルで見つけたイタヤガイ。海底から出ていたものを、表面の泥を払ってあげてから撮影した。上の殻は平らで、下の殻はふくらんでいる
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