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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩67
−「シイラ」− しばしば海洋文学に登場

 紺碧の海に停泊した小舟のアンカーロープにつかまり、流れてくるクラゲや魚に目をこらしている。マアジの群れが一斉にこちらへ向かって泳いでくる。「何か来るぞ」という予感の一瞬あとに現れたのが、このシイラの群れだ。  シイラには外洋の漂流物に寄りつく性質があるため、しばしば海洋文学に登場する。ヘミングウェイの小説『老人と海』では、主人公の老人が、巨大なカジキと格闘しながら、「料理すれば旨い魚なのに、塩かライムでも持ってくればよかったなぁ」と言いながら食べるのが、釣りたての生のシイラだ。『大西洋漂流76日間』という実話に基づく本の中では、救命ボートで外洋を漂流していた男が、手銛でとらえたシイラを干物にして食いつなぐ話が描かれている。  ハワイではシイラはマヒマヒと称され、高級レストランで人気の魚だ。そのシイラが、最近の舞鶴では、実にお手頃な値段で売られている。当然,我が家の食卓にも頻繁に上がる。ブリとよく似た身で、刺身でも,照り焼きでも、ソテーでも,正直ブリほどではないがおいしく頂ける。  鮮魚店ではいつも切り身で売られているため、どれくらいの大きさのシイラが水揚げされているのかと思い、漁連を覗いてみたところ、1メートル前後の立派なシイラがごろごろと転がっていた。同じ日、巻き網で揚がったブリも大漁だった。  京都府の漁業では、通常、定置網に入るブリを水揚げしている。定置網というのは、網に迷い込んだ魚だけを獲る漁法で、いったん入網した魚のうち7割は逃げてしまうそうだ。効率は悪いが、魚を獲りすぎる心配は少ない。ところが同じ海域で、他府県から来た船が集魚灯を使った巻き網でブリやマダイを一網打尽にしてしまう。「一生懸命海をきれいにして稚魚を放流しても、あんな獲り方しとったらな」と嘆く西舞鶴の魚屋さんと、まったく同感の筆者である。かくして、地球環境にやさしく家計にもやさしいシイラを日々頂くことになる。
写真=冠島の小島の手前、トドグリの水面直下に現れたシイラの群れ。体長50センチ
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